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犬土偶日記

海の近くに住みたい

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話題:種子島&屋久島 2007年夏

2007年07月17日

犬土偶旅行記 15日目 鹿児島大学病院と指宿砂むし温泉

公開日時: 不明

昨日昼過ぎまで寝てゐたこともあつて、なかなか眠れなかつた。夜中に猫を驚かせたりしつつ、いつの間にか眠りに就いてゐたが恐らく2時か3時までは起きてゐたのではないかと思ふ。それで5時起きだからつらい。目覚まし時計が初めて役に立つたわけだが、目覚ましが鳴る頃には既にみんな起きて忙しなく動き回つてゐた。今日は種子島を出て鹿児島へ行かねばならん。祖母の治療のために鹿児島大学病院へ行くのだ。それだけなら俺が行く必要は無いんだが、どうせならみんなで温泉でも入らうといふ話になり、一寸遠いが指宿まで小旅行することになつたのだ。西之表港から高速艇で1時間半ほどで鹿児島まで行ける。ただしこれは客船なので車は積めない。俺が1人で鹿児島観光に行く時は原付を持つて行くのでフェリーで4時間だ。

祖母の病気はATL(成人T細胞白血病リンパ腫)といふやつで、九州地方に多い病気らしい。主に母親から子供に母乳を介して感染する、HTLVだか何だかいふウイルスが原因で起こる。感染率は20〜30%らしいんだが、うちの母親や叔母が高確率で感染してゐる。5人ゐるうちの3人が感染してゐる。残りの2人は調べてゐないだけで感染してゐないといふわけではない。うちの家系は平均より感染率が高いやうだ。感染してゐても発症するのは5%程度らしく、ほとんどの人は発症しない。それでも祖母は発症した。祖母が持つてゐたウイルスは通常のよりも強いのかもしれない。潜伏期間は数十年で、主に60〜70代で発症するらしい。今のところ確実な治療法は無く、抗癌剤も効きにくい病気のやうだ。リンパの中にある免疫機能を司るT細胞といふやつが癌化して異常増殖し、免疫機能が低下して通常では罹らない病気で死んだりするらしい。エイズに似てゐるが、エイズの場合はT細胞が減少し続けて免疫機能が無くなるので真逆だ。発症する場合にも色々パターンがあつて、急激に発症してあつと言ふ間に死んでしまふパターンや、あまり症状の出ない長期的なパターン等色々あるやうだ。祖母が発症したパターンはリンパ節が腫れるやつで、平均余命は発症して半年〜1年といふ悪い症状だ。だがうちの祖母は発症して1年以上経つてゐるが、まだ元気に動き回つてゐる。抗癌剤が上手く効けば3年生きることもあるらしい。そんな酷い病気には見えないんだが、ネットで調べる限りはさういふ病気だ。

昨日来た肺癌の親戚が最初に手術をする時にうちの母親や叔母と一緒に祖母も大学病院に見舞ひに行つた。5月初めの頃、俺が飛行機のチケットを取つた頃のことだ。その頃既に祖母はATLを発症してゐたのだが、誰も気付いてゐなかつた。ATLが発症すると、全身に湿疹が出ることがよくあるらしい。祖母はその頃腕や顔に湿疹が出てゐて、種子島の皮膚科で診てもらつてゐた。でも治らないのでやぶ医者だと思つてゐたらしい。皮膚以外にも首や腋のリンパ節が腫れてゐて、今思へばまさにATLの症状なのだが、その頃は別に何とも思つてゐなくて肺癌の親戚の見舞ひの序でに大学病院の皮膚科で湿疹を診て貰つたらしい。その時にリンパのことも話したら、それが気になると医者に言はれたやうだ。それで膠原病内科といふところで調べたらATLが発覚した。親戚が肺癌にならなかつたら今頃祖母は畑で倒れて死んでゐたかもしれない。

俺も感染してゐるかもしれない。ここら辺はATLの感染者や患者が多いので、鹿児島大学病院はATLの治療ではそこそこ良い場所だらう。岐阜の方では医者すらあまり知らない可能性もある。序でにここで俺も血液検査をして貰はうと思つた。まあ感染が分かつても発症を防ぐ手段は無いので意味は無いんだが、一応知つておきたい。といふわけで、鹿児島大学病院へ行つて検査をし、祖母も診て貰ひ、その後で指宿温泉に行くといふ果てしなく長い旅が始まつたのです。寝不足で瀕死の状態からスタートですよ。猫は家の外に出して置き去り。エサはたぶん十分な量を置いて行つたと思ふ。まあいざとなれば山で鳥でも捕まへて食ふだらう。一度うずらみたいな鳥を捕まへて食つてゐたらしいし。あんな弱い猫が野生の鳥を捕まへたなんて信じられんけどな。

7時の船に乗るために6時を少し過ぎた頃に西之表港へ向かつて出発。荷物の準備は昨日のうちにしてあるので大丈夫だが、眠いのだけが心配だ。西之表に着き、高速艇乗り場で船を待つ。船はトッピーとかロケットとか色々あるが、会社が違ふだけで大差無い。名鉄とJRみたいなものだ。出発時刻が違ふので自分の都合に合はせて選べば良い。今回はロケットに乗ることになつた。往復切符の方が安いといふことで往復を買つた。叔母に酔ひ止めの薬を貰つて飲んだ。乗船時刻になり、船に乗り込む。2階の右窓側。北の鹿児島に向かふので、右側には西之表から北の種子島と、鹿児島大隈半島や桜島が見えるはず。天気は悪い。夜中には雨が激しく降つてゐたし、朝になつても晴れない。指宿方面が不安。俺が種子島に来てすぐの梅雨の豪雨であの辺りは土砂崩れが多発した。元々崩れやすい地質で大雨に弱いらしい。梅雨で長期間凄まじい量の雨が降り、さらに台風4号で短期間に大量の水分を補給し、地面に含まれてゐる水分量がかつてないほどになつて凄く危険な状態だとかニュースで言つてゐた。土砂崩れで電車が脱線したりしてゐたところを通る。狙はれてるから俺が乗る時に土砂崩れが来さうな気がする。

高速艇に乗るのは初めてだ。種子島に船で来たことはあるが、その時はフェリーだつた。どれほど速いのかとか、どんな感じなのかとか、色々楽しみにしてたんだが、不覚にもすぐに寝てしまつた。寝不足といふのもあつたが、叔母に貰つた酔ひ止めで眠くなつてしまつたらしい。種子島が見えなくなるぐらゐのところまでしか覚えてゐない。本当に出発してすぐに寝てしまつたらしい。気付いたら桜島が見えてゐて、港に入るところだつた。天気は悪く桜島の上の方には雲が掛かつてゐて山の形すらハッキリ見えない。一応写真を撮つたが、大したものでもないし面倒なので載せない。一応船の速度だけは分かつた。想像以上に速い。少し時化てゐたので揺れた。酔ひ止めを飲んでなかつたらヤバかつたかもしれない。

船を降りてすぐタクシーに乗り、大学病院へ向かふ。市街地から少し離れた山の上にあつた。中に入り、叔母は祖母の方へ。俺は保険証のコピーをカバンから出し、初診申し込み。保険証はコピーでOKなのかと聞いたらダメらしい。受付の人が他の人に聞きに行つたりしてゐた。今回だけは特別にコピーでOKといふことにするが、次回本物を持つて来いと言ふ。次回なんて無いよ。今日だけで血液検査して結果を出せや。まあ受付の人には医者がどんなことをするのか分からんから、期間もどうなるか分からんのだらう。俺にも分からん。今日は血だけ採つて検査結果は来週とか言はれるのかもしれない。どうせ本物の保険証なんて持つて来てないし、コピーが認められないなら無理して検査して貰ふこともないかと思ひ、検査しないことにした。祖母の診察を待つ。長い。アホみたいに長い。一体何時間待たせるんだらう。散々待たされて漸く呼ばれ、叔母と一緒に中に入つて行つた。眠くて眠くて耐へられず、いつの間にか寝てゐた。

患者が異様に多い。デカい病院だな。外にはタクシー乗り場みたいなのもあつた。地下にはレストランもある。祖母は相当良くなつてゐるやうに思へるんだが、どうも見た目ほどは良くなつてゐないらしい。俺が種子島に来る少し前にかなり悪くなつて、湿疹も全身にかなり多く出てゐて、疲れて動けないやうな状態だつたらしい。かなり調子が悪くなつて、予定よりも早く病院に診て貰ひに行つたぐらゐらしい。それで俺が来る少し前に抗癌剤をやり始め、俺が来る日にも肺癌の親戚の大手術と一緒に祖母も抗癌剤をやつたりしてゐた。どうやら抗癌剤が効いたやうで、俺が来てからも湿疹が目に見えて減つてゐたし、体が弱つてゐるやうな気配も無かつた。叔母が言ふには、今が一番良い状態らしい。血液検査の結果次第では抗癌剤をやめて飲み薬だけの治療に切り替へて通院も月1回にするみたいなことを言はれてゐたんだが、今回2時間も血液検査の結果を待つて出た答は前回の治療を続行するといふもの。また抗癌剤を点滴し、2週間後の31日にまた病院へ行かねばならんと言ふ。点滴を打つ時間も長い。また2時間近く待つ。合計5時間。その間俺は何度も寝たり起きたりして待合室で待つ。睡眠は十分取れたやうで、後半は眠気も消えてスッキリ。待合室でボーッと座つてゐた患者に看護婦が話し掛けてゐた。「お迎へが来たから逝きませうね」とか言ひながらどこかへ連れ去つた。怖えよ。

祖母が点滴を打つ間に薬の処方箋を貰ひ、叔母が病院の外の薬局に薬を買ひに行つた。叔母が戻つて来てから病院の地下のレストランで昼飯。朝飯も食つてこんなところで昼飯も食つたら晩飯が食へんかもしれん。今日は指宿の温泉旅館で鯛料理のコースだ。控へめにしておいた方が良いやうな気がする。祖母の治療が長引いて14時ぐらゐになつてゐるし。そんな不安を感じながらも何故か生姜焼き定食を頼む俺。死んだな。祖母はカツカレーを食つてゐた。肉が好きらしい。俺が種子島に来た頃はよく豚肉の話をしてゐた。砂糖醤油で似て食ふと美味いとか何度も言つてゐた。外でバーベキューやりたいみたいなことも言つてゐた。入れ歯をどこかで無くしたらしく、歯医者に行つて入れ歯を新しく作つて貰つたんだが、なかなか合はずに微調整のために歯医者にも通つてゐる。歯ができて肉が食へるやうになつたので、早速俺が来て数日後に肉料理を貪り食つてゐた。相当肉が好きらしい。祖母は基本的に何でも甘い砂糖醤油で煮る。それが美味いらしい。叔母やうちの親が作るものは不味いらしい。「美味うなか」と言つて食はないことがある。味噌汁も赤は食はない。白なら何でも良いのかと思つてゐたが、銘柄にも拘りがあるやうだ。叔母が買つて来た白味噌がいつものと違ふと言つて文句を言つたりしたこともあるらしい。ながらめも砂糖醤油で煮てゐた。俺は塩焼きが好きなんだが。といふか、九州地方は醤油が甘いので砂糖醤油で煮るとすげえ甘くなつてかなりキツい。祖母が美味いといふ味は他の人には美味くない。逆に他の人が美味いと思ふ味は祖母には「美味うなか」といふことらしい。畑で作つてゐる茄子の味付けも似たやうな感じでくどい。うちの親が生姜と醤油でサッパリした味にしたら「美味うなか」とか言つて食つてなかつた。素麺が好きらしいんだが、つゆが甘くないとダメらしい。つゆが合はないとまた「美味うなか」と言つて食ふのをやめる。「食ひつけてなかからな(食べ慣れてゐないから)」とか言つてゐたが、さういふものだと思つて食へば食へないこともなからうと思ふんだが。とにかく祖母がウモーナカと呟いて不味さうにしてゐるのをよく見る。大学病院のカツカレーも美味うなか味らしい。カツを2つくれた。ますます晩飯が食へなくなつたな。祖母はカレーが口に合はない味だつたといふのもあるかもしれないが、あまり食欲が無ささうな感じだつた。弱いやつとはいへ、抗癌剤の副作用で体に負担があるのかもしれない。

飯を食つてから指宿へ向かふ。タクシーだと金銭的に死ねる距離なので電車で行く。JR鹿児島中央駅から乗り換へ無しで行けるといふのは分かつてゐる。しかし大学病院が鹿児島中央駅より指宿側にあるので、病院の近くの駅から乗つた方が良いだらう。それでも下手に違ふ路線に迷ひ込んだりすると拙いし、快速電車が通過してしまふやうなこともあるかもしれないので鹿児島中央駅にタクシーで向かふ。鹿児島中央駅から14時40分の電車があるらしい。14時20分頃に大学病院を出た。丁度良い時間だと思つてゐた。しかし2分ぐらゐ間に合はなかつた。飯をもう少し早く食ひ終つてゐれば間に合つたのに。電車はいつもいつもかういふギリギリのタイミングで乗れない。俺が駅に着くと同時に電車が出てゐる。宇宙が俺を恐れてゐるのだらう。駅は無駄にデカい。何故駅に観覧車があるのですか。鹿児島なんてどうせ可児より田舎だらうと思つてバカにしてゐたが、普通に市街地は都会だつた。バカにしてスマン。

鹿児島から指宿方面の電車は1時間に1本しか無いらしい。見た目は都会でもやはり田舎なんだな。電車を待つ間が暇なので駅の中をウロウロしてみた。飲食店が多い。階段を下りたら本屋があつたので入つてみた。そこでパチスロの攻略雑誌を買つた。9月まで打つ予定は無いんだが、新機種の出るペースが早いので台のスペックや解析値は旬のうちに雑誌を買つておかないと詳しく知ることができない。ネットでも調べることはできるが、ネットは雑誌を丸写ししただけのところがほとんどな上に、写し間違ひも多く、肝心な知りたいことが書いてなかつたりもする。雑誌を買つておくのが安心だ。まあ雑誌も誤植や解析ミスがあつたりするので全面的に信用することはできない。打ち方や攻略手順に関しては雑誌は参考にならない。もつと効率の良い打ち方が存在することがほとんどなのでそれは自分で打ちながら調べれば良い。雑誌のライターも機種の出るペースに追ひつかないのか、かなり適当で雑だ。攻略雑誌をレジに持つて行く途中、何故か突然猛烈な便意に襲はれた。レジの人、早くしてください。エスカレーターさん、もつと早く動いてください。顔面蒼白になりながら便所へ。何故かウンコ部屋満員。宇宙は俺を恐れてゐる。俺を葬りたくて仕方が無いらしい。だが俺は負けん。何とか間に合つた。恐ろしい量のウンコを葬つた。種子島に来る前は1日1食の生活だつたが、こちらに来てからは1日3食だ。少量づつでも無理矢理食ふ生活。まあここ数日は食欲が極端に無くなつてあまり食はなくなつてたんだけどな。今日は久しぶりに多めに食つてゐる。

15時37分の電車に乗る。普通列車なので全ての駅に止まる。眠くなつて途中で少し寝たりもした。1時間半ほど掛けて指宿へ。単線の場所が多かつた。電車の本数が少ないのはこれのせゐか。しかし狭いから複線にはできさうにない。物凄く狭い谷間に無理矢理線路を敷いてゐる感じ。電車の両脇に傾斜の激しい山が迫つてゐる。海と山に挟まれた狭い隙間を走る。山は砂でできてゐるやうに見える。これは土砂崩れが起きても不思議は無い。ところどころ山が崩れて地肌が見えてゐるし、青いビニールシートが被せてあるし、新しく作られたばかりの木でできた即席の堰がそこら中にある。怖いな。崩れたら一撃で死ねる。高い山がすぐ横にある。山と言ふか崖だ。しかも砂の。鹿児島市街と比べると凄い田舎だな。海と山に囲まれた自然だらけの場所。なかなか良さげな場所だ。鹿児島観光の時に原付で薩摩半島を回らうと思つてゐたが、これは原付で回れる距離ではないかもしれない。

駅に着いてタクシーに乗り、予約しておいた指宿白水館といふ旅館へ。思つてゐたのとは全然違つた。敷地に入つてから玄関まで結構あるし、凄く豪勢な感じだ。玄関には着物を着た迎への人が大勢出てゐて落ち着かない。建物も恐ろしくデカい。ロビーもアホみたいに広い。もしかしてすげえ高級な旅館を予約したのか?4人で1泊2食付き54600円とか言つてゐたんだが。その値段でこんなところに泊まれるのか。ロビーで少し待ち、部屋まで案内される。外から見た感じよりもさらにデカい。恐ろしく広い。迷路みたいだ。途中で恐ろしく広い中庭が見えた。芝生の庭に立派な松が大量に生えてゐる。廊下には博物館みたいに色んなものが展示されてゐる。土産屋もある。すげえな。こんな旅館に泊まるとは思つてなかつた。これは迂闊に部屋から出ると迷子になるかもしれん。道順はしつかり覚えておかねばならん。部屋は6畳ぐらゐの和室と洋室が1つづつ繋がつた感じ。外の景色は少し海が見えるがほとんど松の林。しかし松もしつかり手入れされてゐてなかなか良い景観。遠くに見える島は知林ヶ島とかいふところか。潮が引いた時に歩いて渡れる島が近くにあるらしい。恐らくそれだらう。まあ高い部屋ではないからこの旅館にしてはあまり良くない景観なんだらうと思ふ。

祖母がいきなりやつてしまつた。便所へ行くと言つて行方不明。便所は各部屋にあるんだが、それを知らずに外へ出たらしい。しかも下着みたいな格好で。みんな部屋の便所にゐると思つてゐた。長い便所だなと思つてゐた。しかし実際は外に出て便所を探し回り、見つからないので部屋に戻らうとしたら部屋の場所が分からなくなつて手当たり次第に他の部屋のドアを開けて探し回つたらしい。散々迷つて他の客に迷惑を掛けた挙句、旅館の人に連れられて部屋に戻つて来た。

指宿と言へば砂むし風呂。砂に埋められるだけのやうに思へる。何が良いのかよく分からない。サウナみたいなものだらうか。どんなものか知らないが指宿に来たらこれは必ず入らねばならんだらう。ただし白水館の砂むしは別料金で1050円。岩盤浴も1050円。岩盤浴には良い思ひ出が無い。歯ァ食ひ縛るぞボケが。まあこれも入つておくことにする。大浴場もある。海水の温泉とかもあるが、これらはタダで入れる。部屋にも風呂があるが、こんなところまで来て部屋の狭い普通の風呂なんか入るわけがない。まづは飯の前に大浴場に行つてみた。晩飯まであまり時間が無かつたので急いで行く。

迷路みたいな旅館で少し迷ひながら風呂へ向かふ。風呂の近くに旅館の人が並んでゐてイチイチ声を掛けられるので俺にはあまり気軽に風呂に行ける雰囲気ではない感じだ。一通りタダで入れる風呂に少しづつ入つてみることにした。熱い風呂2種類、プールみたいな広い風呂、その中心にある泡風呂、サウナ、露天風呂、海水の温泉、かまくらみたいな形のサウナ、色々と一通り少しづつ入つた。風呂に入るだけでも色々楽しめるな。まだ外の景色がよく見える風呂も別の場所にあるし、砂むしや岩盤浴もある。大浴場の中にある風呂に一通り入つてから急いで部屋に戻る。

6階へ。テーブルに案内されて飯を食ふ。海老コースとか鯛コースとか色々あつたらしいが、鯛のコースで予約してあつた。他のテーブルは海老コースが多く、巨大な伊勢海老の造りが真ん中に乗つてゐる。すげえな。海老の方が高さうに見える。しかし海老は身が少ないしな。まづ前菜から。よく分からない物が少しづつ乗つてゐる。たぶん祖母の口には合はないだらうなと思つた。かういふ洒落た高級な感じの物は「食ひつけてなかから美味うなか」といふ感想だらう。実際あまり美味そうに食つてはゐなかつた。ただ、メインの鯛のお造りが豪勢に出て来た時は美味さうに食つてゐた。祖母は素朴なものが好きみたいだ。コースのメニューが分からないので最終的にどれだけ出て来るのか分からない。次から次へと色々出て来る。サラダも出るしお吸ひ物も出るし魚の煮物も出るし、茶碗蒸しもある。魚系を中心に色んな物が次から次へと出て来る。全てがイチイチ高級さうな感じに作られてゐる。食つても食つても際限なく出て来る。だが米が出て来ない。おかずばかりが次々とアホみたいに出て来る。米と一緒に食ひたい。その点では祖母と俺は同じだらうと思ふ。米が無いのが不満さうだつた。もうそろそろ量的に終りだらうと思つたところが大体中間地点だつた。量が多過ぎ。朝から断食して丁度良い感じだ。昼に生姜焼き定食なんか食つてしまつたことを猛烈に後悔した。刺身だけでも相当な量だ。お吸ひ物を少し啜つた瞬間に祖母が「味が無か」と呟いた。さういふ物を食つたことが無いから合はないんだらうな。甘い白味噌で煮込めば美味いのに・・・とか思つてゐたのかもしれない。基本的にほとんどの料理が口に合はなさうな感じだつた。俺は大満足だつたけどな。最後の方でご飯と味噌汁が出てきたんだが、何と味噌汁が赤だしだつた。九州だから絶対白味噌だらうと思つてゐた。ここで赤を出す心意気に惚れた。やはり味噌汁は赤が最強だ。赤で育つたからとか赤を食ひ慣れてゐるからとか関係なく、純粋に赤が一番美味いと思ふ。まあ具によつて使ひ分けるのが良いんだけどな。赤が合はない具もあるからな。祖母は予想通り口も付けない。係の人が次の料理を持つて来た時に祖母が何か言ひ掛けた。これとこれはまだ口を付けてないから・・・とか何とか言ひ掛けて猛烈な勢ひで叔母に止められてゐた。何を言はうとしたのか分からんがロクでもないことに違ひない。田舎者丸出しで結構恥ずかしい。手を付けてないからお前らが食へとか、持ち帰るから別の容器に入れてくれとか、その分の料金を引いてくれとか、祖母が言ひ掛けた言葉の続きを色々想像して震へた。黒豚のしやぶしやぶは祖母も気に入るかと思つたが、ポン酢がダメだつた。ウモーナカと呟いて別の料理のタレか刺身醤油か何かを付けて食べてゐた。本当に普段食つてる物しか口に合はんのかもしれんな。俺は普段食はない物の方が珍しさもあつて良いんだけどな。勿体無いから無理して食ひまくつた。相当大量に食つた。これは根本的に料理自体がをかしい。常人に食ひ切れる量ではない気がする。微妙に残しながらも大体完食と言へるほどには食つた。貧乏性だから胃が破れても食はねばならんのだ。うちの親は肉が嫌いで絶対に食はない。それで黒豚のしやぶしやぶを俺にくれたんだが、相当キツかつた。それも無理して時間掛けて食つた。まだ残つてゐたのも食はうと思つたんだが、さすがにこれはもう無理だと思ひ、最後まで残しておいたデザートを食つた。マンゴーと巨峰でフィニッシュ。祖母は結局あまり食つてなかつたやうな気がする。前半は結構食つてたんだけどな。やはり食欲が無いらしい。勿体無い。ちなみに、晩飯は写真に収めてゐない。デジカメを出せるやうな雰囲気ではなかつた。

すげえ満腹。こんなに食つたのは久しぶりだ。部屋に戻つてひとまづ休憩。叔母は飯前に風呂に行かなかつたので、飯食つてすぐに風呂へ行つた。親と祖母も風呂へ行つた。部屋の鍵が1つしかないので、全員バラバラに行動すると鍵を持つてる人が戻つて来るまで部屋に入れなくなる。かと言つて鍵を掛けずに部屋を空けるのは不安がある。といふわけで誰かが留守番することになるのだが、自然と俺が留守番することになつた。親が祖母を風呂に入れてからすぐに戻つて来ると言つてたし、俺も食ひ過ぎで動けなかつたので丁度良い。窓のそばの鏡台のところにノートPCを置き、AIR-EDGEを繋いでネットできるか試してみた。圏外。やはり無理か。親と祖母が戻つて来る前に書けるだけ日記を書いておくことにした。

予想以上に親が戻つて来るのが遅かつた。温泉を堪能してるのか、また祖母が迷子になつたのか、多少不安になりながらも待つてゐた。どうやら砂むし温泉に入つて来たらしい。暑くて10分で限界だつたとか。祖母は砂むしには入つてないやうな気配。聞いてないから知らんけど。今度は俺が行く番。砂むしは受付が22時までらしい。時計を見たら21時半過ぎ。ギリギリだ。急がねば。早歩きで風呂までの遠い道のりを歩く。遠い。ひたすら遠い。こんなに広いと体力が無い人間には相当キツい。夜は庭園が緑系の照明でライトアップされて滅茶苦茶きれいだ。庭に出ても良いらしい。これは後で写真を撮らねばならんなと思ひながら、取り敢へず風呂へ向かふ。

大浴場の入り口付近で砂むし温泉の受付をしてゐた。部屋番号と名前を書いて入る。後で料金加算される仕組みか。ここで別の部屋番号を書けばタダで入れるだらう。受付の場所を防犯カメラで映されてゐて後で照合される可能性はあるが、たぶん大丈夫だと思ふ。でも正直に書いておいた。面倒なことになると大変だ。1人で来てゐたらやるかもしれない。受付で砂むし専用の浴衣を受け取り、脱衣所で着替へる。砂むしと書かれたドアを開けて中に入り、説明を聞く。手を体の真横につけて足を伸ばして仰向けに寝て、横から砂を被せて行く。温泉で湿らせた砂だらうか。結構重量がある。そして中途半端に熱い。これが砂むしか。大体10〜15分ぐらゐ入るのが普通だと言はれた。無理はせず、キツかつたら起き上がれと言はれた。だが、たつたこれだけで1000円なのだから、限界ギリギリまで埋まつてゐたいではないか。近くに掛け時計があつて、それで時間を確認しろと言ふ。だが、眼鏡をしてゐないので全く見えない。こんなに視力が弱くなつてゐたのかと自分でも驚いた。俺の2分ぐらゐ後に来た老夫婦が結構長い時間埋まつてゐた。眉間に皺を寄せて睨み付けるやうに時計をしばらく見れば何とか時間が分かる感じだつたので時々時計を凝視してゐたが、老夫婦は20分近く入つてゐた。入り始めた時間が既に21時50分頃で、旅館の人も「早く出ろボケ!」と思つてゐたに違ひない。でも入り続ける。老夫婦が満足して出て行つた後も入り続ける。暑さは思つたほど酷くない。だが濡れた砂の重量で呼吸が大変だ。胸が圧迫されて、呼吸をするのに余分なエネルギーが要る。体重の軽い人が常に覆ひ被さつてゐる程度の圧迫感はある。下手に動くと砂が落ちて砂むしの意味が無くなる。最初の方で足を少し動かしてしまつて、つま先が出てしまつてゐる。踵で砂を掘つて自ら埋まらうと思つて頑張つてみたが無理だつた。旅館の人に頼むのは負けた気がするから嫌だ。途中で写真いかがですかと旅館の人が話し掛けて来た。砂に埋められた姿を記念撮影するらしい。1枚1000円とか何とか。激しく要らぬ。30分ほど埋まつて、まあ元は取れたのかなと思ひ、出ることにした。身動きの取れないサウナみたいな物だな。なかなか良い。ただ、砂が浴衣の隙間に入つて気持ち悪い。出てすぐの場所にシャワーがあつて、その奥は大浴場と繋がつてゐる。シャワーで砂を流し、砂むし専用の浴衣を籠に捨て、大浴場へ。飯前は一通り軽く入つただけだが、今回はじつくりと入る。海水の露天温泉に結構長い間入つてゐた。宿泊客は結構少ない。夏休み前だし平日だからだらうか。ほぼ貸切みたいな状態だ。真ん中にある広い風呂で泳いだ。激しく泳いだ。まさか今夏の初泳ぎが種子島の海ではなく指宿の温泉にならうとは夢にも思つてなかつた。砂むしと合はせて2時間は入つてゐただらうか。これだけでも相当体力を消耗する。水飲み場で冷水を相当な量飲んだ。風呂から出て部屋に戻り、デジカメを持つて庭園へ。叔母が飯後すぐに風呂に行つてまだ戻つてないらしい。サウナで倒れてるんぢやないかと親が心配してゐた。

旅館の中にカラオケとか飲み屋みたいなのもあつて、夜中に酔つ払ひのリーマン風の団体みたいなのがウロウロしてゐた。明日のゴルフの大会で手加減しない勇気がどうのかうのとか話してゐた。社員旅行みたいなやつなのかな。誰もゐない庭園に出て写真を撮る。1枚目はフラッシュを焚いて撮つたんだが、目立つのでやめた。庭が見える客室とか廊下から丸見えだ。バカな田舎者が写真撮つてるとか見下されると腹が立つしな。フラッシュ無しでやると感度を上げるしかない。感度を上げるとノイズが目立つ。感度を下げてシャッタースピードを遅くすると手ブレでダメになる。三脚を使つてシャッター遅めでやると動きの無い風景は綺麗に撮れるんだが、残念ながら三脚は種子島に置いてきた。仕方が無いので高感度で撮影する。この旅館で撮つた写真を何枚か載せてみる。書かなくても分かるだらうと思つて何も書いてないが、犬土偶日記で下のやうに写真を載せてゐる場合、低画質のサムネイルを表示してゐる。それをクリックするなり選択してEnterキーを押すなりすればある程度高画質の画像が見れるので、今まで気付いてなかつた人は宇宙科学館の写真とか海の写真とか興味があつたら見てみると良い。下のもクリックすれば多少画質の良い物が見れる。貧乏でヒキコモリといふのを売りにして来たやうな俺がこんな高級さうな旅館に泊まつて良いのだらうか。

指宿白水館 部屋から見える景色 指宿白水館 夜の庭園1 指宿白水館 夜の庭園2 指宿白水館 夜の庭園3
指宿白水館 夜の庭園4 指宿白水館 夜の庭園5 指宿白水館 夜の庭園6 指宿白水館 夜の庭園7

大量の写真を撮つて満足して部屋に戻つたが、まだ叔母は戻つて来てないらしい。客が少ないからサウナで倒れても発見されないかもしれない。飯食つてすぐ風呂に行つたから3時間ぐらゐは風呂にゐることになる。まさか迷子になつてるなんてことはないだらう・・・とか思つてゐたら丁度戻つて来た。岩盤浴に入つてからサウナとか温泉とか長時間堪能してゐたらしい。デジカメの画像をノートPCに取り込み、日記を少し書いてから寝た。あまり夜更かしはできん。船や病院で少し寝たとは言へ、睡眠不足に変はりはないし、鹿児島駅や病院や旅館を歩き回つて疲れてゐるに違ひない。船に揺られたり電車に乗つただけでも相当疲労しいてゐるに違ひない。何より温泉で長時間過ごしたのが不安だ。逆に疲れ過ぎてヤバい気がしてゐる。それでも折角温泉旅館に来たんだから温泉を堪能せずにはゐられない。時間的な余裕が無くてまだ岩盤浴も入つてゐない。明日は10時にチェックアウトだ。飯は7時から9時の間に食はねばならん。さうすると早起きして温泉に行く必要がある。早起きするためには早く寝ないと拙い。これは相当キツい。それでも堪能し尽すのだ。中途半端はダメだ。

話題:種子島&屋久島 2007年夏

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