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話題:種子島&屋久島 2008年夏

2008年09月03日

屋久島2008 4日目 白谷雲水峡〜太鼓岩

公開日時: 不明

明日は昼の船で種子島に帰らねばならんから実質的に今日が屋久島最終日。まだ白谷雲水峡に行かねばならん。最優先の縄文杉はクリアしたが、もう屋久島には来れないかもしれないので白谷雲水峡も無理してでも見ておきたい。去年も一応行つたが、祖母を連れてゐたのであまり奥までは行けず、弥生杉と二代大杉を見ただけだつた。さつき吊橋の辺りまでしか行つてゐない。その奥にもののけ姫の森がある。そこまでは行つてみたい。だが疲労が蓄積してゐるので起きれないかもしれない。

目覚ましをセットしておいたがやはり早い時間には起きれなかつた。しかし昼前には起きることができた。民宿のオーナーはどこかに出掛けてゐてゐなかつた。まだ昼前なので雲水峡は十分堪能できるだらう。今日は良い天気だ。11時前には家を出たと思ふ。

山の中腹から見下ろす宮之浦まづは宮之浦のスタンドで給油。そしてAコープのところから山へ入つて行く。急激に山を登つて行くので気圧変化が激しい。耳がキューンと来る。道も細いしグネグネ曲がつてゐる。去年工事中だつたところはまだ工事してゐた。いや、少し違ふ場所かもしれない。工事中のところは砂利道なのでスリップが怖い。見晴らしの良い場所で写真を撮つたりしながら白谷雲水峡を目指す。ヤクスギランド方面よりこちらの方が道が狭く、崖も怖い。どんどんどんどん登つて行く。エンジンのパワーが足りないので速度は出ない。登つていく時は崖側なので恐ろしく狭い場所でバスとすれ違ふ時はかなり恐怖感がある。去年はここを車で走つたが、ほとんど車を運転したことが無い状態で無事にやり過ごせたのは奇跡だと思ふ。

白谷雲水峡に到着。奥の駐輪場にバイクを停める。入り口で300円を払つて岐阜から来たことを教へてあげる。そして山へ入る。去年はいきなり弥生杉の方へ行つたが、今日は弥生杉は帰りに寄ることにする。川の中にある巨大な岩の上を歩く。憩ひの大岩とか何とか言ふらしい。そこを歩いてさつき吊橋へ。ここまでは普通に来れる。縄文杉登山の筋肉痛があるから多少はキツいが、ここまでなら何の問題も無い。本を読むと、ここから先がキツいらしい。ここまでは歩道が整備されてゐて歩きやすいが、この先は登山道らしい。橋を渡らずに二代大杉の方から行くと原生林歩道といふ長い道がある。橋を渡つてから行くと楠川歩道といふ道がある。楠川歩道の方にはあまり見るものが無い。原生林歩道の方は名前の付いた杉がいくつかあるが道が長い。当然両方歩く。往きと帰りで違ふ道を歩くのだ。どちらから行くのが良いだらうか。楠川歩道の方はあまり見るところが無い。帰りに何も無いのはつらいかもしれない。といふことで、先に楠川歩道の方へ行くことにした。楠川歩道は縄文杉のトロッコ道まで続いてゐる。

白谷雲水峡1 白谷雲水峡2 白谷雲水峡3 白谷雲水峡4
白谷雲水峡5 白谷雲水峡6 白谷雲水峡7 白谷雲水峡8
白谷雲水峡9 白谷雲水峡10 白谷雲水峡11 白谷雲水峡12
白谷雲水峡13 白谷雲水峡14 さつき吊橋1 さつき吊橋2

吊橋で俺を襲ふ猿さつき吊橋を渡つてゐる途中、ワイヤーを伝つて猿が橋に上がつて来た。そのまま別の場所に行くのかと思つたが、何と橋の上で休憩し始めた。激烈にウザい。無視して歩き続ければ逃げて行くかと思つたが、近づいたら口を開けて威嚇してきた。これはダメかと思ふ間も無く、いきなり襲つて来た。焦つて後ろに下がつた、何だか腹が立つて来た。俺は悪くない。猿の襲撃は昨日も体験してゐるが、ある程度離れれば向うも無理してまでは襲つて来ない。しかし逃げ過ぎるのも良くない気がするのだ。逃げるのをやめて立ち止まつてみた。向うも止まる。しかし威嚇を続けてゐる。1歩下がつてみた。追つて来た。でも止まつてまた威嚇して来る。どうすれば良いのかね?睨み合つたまま摺り足でゆつくり下がつてみる。追つて来ない。そのままゆつくり距離を取つたら猿は威嚇をやめて別の方を見た。しかし移動しないから橋を渡れない。橋の途中で猿がゐなくなるまで待つしか無いらしい。激烈にウザい。猿に向かつて猛ダッシュしてみたらどうなるだらうか。向うが怯えて逃げるだらうか。でも襲はれたら怖い。何故俺がこんなに卑屈にならねばならんのだ。腹が立つて仕方が無い。猿ごときに屈するのが我慢できない。でもどうすることもできない。絶滅させたい。楠川歩道の方から観光客が来た。そいつらが猿に近づいて襲はれる場面を動画に撮つてやらうと思つたが、俺がカメラを向けたら写りたくないのか知らんが山に隠れやがつた。それでは埒が明かないのでカメラを向けるのをやめて橋から川を眺めることにした。さうしたら観光客が橋の方に来たが、猿にとつては人間に挟み撃ちにされる形なので逃げるやうにワイヤーを伝つて去つて行つた。

橋を渡つて楠川歩道へ。木で登山道が作られてゐるわけではなく、石が積んであるやうな道だ。どうも大昔の人が作つた登山道がそのまま残つてゐるらしい。この程度の山道なら大した疲労も無く歩ける。どれくらゐの距離があるのか知らんけども。しばらく歩いて行つたら、前の方にゐたオバチャン2人組が立ち止まつて動かない。蛇がゐるらしい。近づいて見たらヤマカガシだつた。岐阜でもよく見る毒蛇だ。かなり強い毒を持つてゐるので噛まれたら危ないが、何もしなければ噛まれることは無い。後でWikipediaで調べたら南西諸島にはゐないと書かれてゐたが、どう見ても明らかにヤマカガシだつた。種子島でもヤマカガシを見たことがある。Wikipediaもあてにならんな。2人組はどうしても進めないみたいなので先に行かせて貰ふことにした。長く歩くとさすがに少し疲れて来る。汗も流れ出る。

楠川歩道1 楠川歩道2 楠川歩道3 楠川歩道4
楠川歩道5 楠川歩道6 楠川歩道7 鹿1
楠川歩道8 楠川歩道9 楠川歩道10 楠川歩道11
楠川歩道12 楠川歩道13 楠川歩道14 楠川歩道15

しばらく歩いて、原生林歩道との合流点に到達。くぐり杉を抜けて意外と簡単に白谷小屋に着いた。もののけ姫の森はまだ先だが、ここまで来ればあと少しだらう。結構大変な道なのかと思つてゐたが意外と大したこと無いな。小屋で水を汲んだり鹿を撮影したりして、先へ進む。

楠川歩道16 楠川歩道17 楠川歩道と原生林歩道の合流点 鹿2
くぐり杉1 くぐり杉2 楠川歩道18 鹿3
七本杉1 七本杉2 七本杉3 七本杉4
七本杉5 楠川歩道19 楠川歩道20 楠川歩道21

七本杉といふのを超えて少し進んだところにもののけ姫の森はあつた。人が多い。それにしても、これはショボいぞ。想像では辺り一面、かなり広い範囲が苔に覆はれた世界だと思つてゐたのだが、実際はかなり狭い範囲だ。これだけなのか。苔なんて他の場所にもいくらでもある。一寸他の場所より密度が高いだけのやうな感じだ。それとももう少し奥に行けばもつと凄いところがあるのか?試しにさらに奥に向かつてみた。しかしすぐに普通の登山道になつた。その先には太鼓岩といふのがあるらしい。もののけ姫の森があまりにも期待外れだつたし、まだ余力もあるし、その太鼓岩とやらまで行つてみようか・・・などとアホなことを考へた。どれぐらゐの距離があるのかも分からんのに。全く予定に無かつたから太鼓岩がどんな物なのかも知らないしそこまでどれくらゐの距離があるのかもよく分からん。入り口で貰つたリーフレットを見るとそんなに遠くないやうに見えるが実際は分からない。まあ行つてみるか。まだ時間もあるし。

もののけ姫の森1 もののけ姫の森2 もののけ姫の森3 もののけ姫の森4
もののけ姫の森5 もののけ姫の森6 もののけ姫の森7 もののけ姫の森8

それまでの楠川歩道よりもキツい山道を登つて行く。急激に登つて行く。結構大変な道だ。縄文杉登山で慣れたとは言へ、縄文杉で体力がついたわけでもないし、むしろ疲労が残つてゐるから結構キツい。上から下りて来る人に、下まであとどれぐらゐあるかと聞かれた。下とは?もののけ姫の森のことだらうか。それなら10分程度だが、雲水峡の入り口のことだらうか。といふか、同じ道を登つて帰つて来てゐるのではないのか。まさか荒川の方から来てゐるのか?安房からバスで荒川まで行つて登山道を雲水峡方面へ歩いて雲水峡から宮之浦へバスで帰るんだらうか。凄いな。マニアだな。下といふのは雲水峡の入り口のことか一応聞いてみたらさうだと言ふ。ここまで何時間掛かつて歩いて来たか自分でもよく分からんのだが、下りは早いしたぶん1時間程度ぢやないかと思つたので1時間ぐらゐだと答へておいた。しかしよく考へたら原生林歩道の方へ行くと2時間掛かるかもしれない。そちらは歩いたことが無いから知らない。まあ良い。1時間で下山できずに猛烈に不安になつたらスマン。

結構長い。どこまで歩けば良いんだらう。ここには来るつもりが無かつたから何の情報も無い。もののけ姫の森までは観光客が多かつたが、その先は少ない。さすがに疲労感が凄い。もののけ姫の森までは結構楽だつたのだが、その先がいきなりキツい登山道だ。これは太鼓岩とやらに行くのをやめて引き返した方が良いのかもしれない。帰りは長い原生林歩道を歩いてさらに弥生杉コースにも回つて行かねばならん。太鼓岩まで行くとするとまだ全行程の半分も歩いてゐないことになる。原生林歩道は相当長い。これは無茶をし過ぎたかもしれない。しかしもののけ姫の森からずいぶん奥まで来てしまつた。ここまで来て引き返すのも勿体無い。入り口で貰つたリーフレットを見たら太鼓岩往復は5時間コースらしい。それは原生林歩道を通つてその時間なのか?楠川歩道だけでその時間なのか?何だか不安になつて来る。帰りは結構遅い時間になるかもしれんな。

楠川歩道22 楠川歩道23 楠川歩道24 楠川歩道25
楠川歩道26 楠川歩道27 楠川歩道28 楠川歩道29

どんどん奥に行き、辻峠といふところに出た。登山用リュックが大量に置いてある。休憩してゐる人が多いが、人よりも明らかにリュックが多い。どうなつてゐるんだらう。辻峠から太鼓岩までは15分ほどらしい。道が細いやうで、上り専用と下り専用の登山道がある。太鼓岩を無視して奥へ行くと縄文杉のコースへ出てしまふ。上り専用登山道を登り始めて驚いた。今まで歩いた中で一番酷い道だ。道と言つて良いのか分からない。木の枝をかき分けながらどこが道だか分からんやうな細い隙間を登つて行く。登山道には目印としてピンクのリボンが木の枝等に結んであるのだが、それが無ければどこが道だか全く分からん。あつても迷ひさうになる。慎重にリボンを探しながら進んでいく。無理して急激に高いところへ登つて行く感じだ。周囲に他の登山客がゐないので不安だつたが、何とか太鼓岩に辿り着いた。小さい標識に従つて木の枝をかき分けて突然視界が広がつた。その瞬間、猛烈にハラワタがモワモワして脚から力が抜けた。断じて怖くは無い。しかしこれは近づきがたい。山から突き出した丸い岩だ。柵も何も無い。そこに大勢の観光客が座つて景色を眺めてゐる。よくそんな場所に座れるな。立ち上がる時によろめいたら死確定だぞ。わざわざ極限まで端に寄つて座つて喜んでるアホもゐる。命を粗末にするな。そこで座つたら立ち上がれんだらうが。こんな狭いスペースに人がたくさんゐる。かういふ場所は高さそのものよりも他人の存在が恐ろしい。下を覗き込んでゐる時に近くの奴がよろめいて体に当たつたりしたらどうするんだ。突然発狂して脇腹に北斗残悔拳をやつてくる奴もゐるかもしれない。疲労で脚がガクガク震へてゐる。断じて恐怖のせゐではない。脚が震へてゐる以上、岩の際まで行くのはバカのすることだし、そもそも人が多過ぎてまともに歩けん状態だからもう帰る。別に岩の先端なんかに興味は無い。下を覗き込むためにはかなり手前で腹這ひになつてゆつくり匍匐全身するしかない。歩いて端に近寄るやうな奴は余命が短いと断言してやらう。

辻峠 太鼓岩上り登山道1 太鼓岩上り登山道2
太鼓岩1 太鼓岩2 太鼓岩3

さて、帰るぞ。あとは原生林歩道と弥生杉だ。辻峠までは下り専用の登山道。10分ほどで下りられるらしい。ピンクのリボンを探しながらゆつくり進む。ある程度道が分かりやすい場所もあるが、分からないところは本当に分からない。他の場所だと木の根や石が人に踏まれて色が変はつてゐたりして分かりやすいんだが、ここはあまり分かりやすくない。結構多くの人が訪れるみたいなんだが、他の場所よりは少ないのかもしれない。非常に分かりにくい。リボンが見あたらない場所もあつて猛烈に不安になる。周囲に登山客がゐないので危険だ。こんなところで迷つたら死ぬぞ。どこが道なのかも分からないやうな状態で歩いてゐたんだが、ピンクリボンが見当たらない場所に出てしまつた。道も狭い。道ぢやないのかもしれないがそれまで歩いて来たところも似たやうなものだ。取り敢へず進んでみる。何となく人が歩いた跡があるやうな感じがする方へ。リボンは視界に無い。これは危な過ぎる。いつでも元の場所に戻れるやうに気をつけながら慎重に周囲を探る。少し奥へ登つて行つたら明らかに人が通れないぐらゐ狭くなつてその先は崖だつた。絶対違ふ。ここは道ぢやない。戻るか。ここへ迷ひ込んだ場所へは確実に戻れる。そもそも下るはずなのに登つてゐるのが不自然だ。登つたり下りたりしながら下つて行くパターンかと思つたが、やはりこれは違ふだらう。下から人の声が聞こえて来た。太鼓岩から帰る人達らしい。俺の方には来ずにそのままどこかへ行つてしまつた。やはりここは絶対に違ふ。珍しい形の木があつたので一応記念撮影。下手するとここから迷つて遭難してゐたかもしれない。少し下に下りたところで首に名札をぶら下げた人が1人で歩いてゐて、慌てた様子でそちらは道ぢやないと教へてくれた。他に行つてゐる人はゐる?と聞かれたのでゐないと答へた。たぶんゐないだらう。ここら辺は分かりにくいかとか呟いてゐた。道を教へて貰つて先へ進む。その人は来なかつた。俺が迷つた辺りにピンクのリボンをつけてゐたのかもしれない。エコツアーのガイドの人だらうか。それともこの辺りを管理してゐるところで働いてゐる人だらうか。もしかしたら数日前に行方不明になつた人を捜してゐる人なのかもしれない。遭難者が出たばかりだから見回つてゐるのかもしれない。

太鼓岩下り登山道から迷ひ込んだ場所の木1 太鼓岩下り登山道から迷ひ込んだ場所の木2 太鼓岩下り登山道から迷ひ込んだ場所の木3

下りは楽だ。重力に任せて駆け下りる。道さへ分かれば大丈夫。膝のバネで上手く衝撃を吸収しながら進む。しかし足の先が痛い。だんだん痛みが異常に気になるレベルになつてきた。縄文杉の時に傷めた親指の爪が悪化してゐる。といふか、白谷雲水峡を歩いて悪化させたらしい。登る時は痛くないが下る時は痛い。靴の中がどうなつてゐるのか分からないが爪が圧迫されてゐるらしい。

辻峠に出て休憩。水を飲んで休む。どうやら太鼓岩は狭いので一定の人数で交代しながら行くやうになつてゐるらしい。ツアーガイドの人達が連絡を取りながら人を入れ替へてゐる。岩は狭いのでここにリュックを置いて行くらしい。だからリュックが異様に多かつたんだな。少し休憩してからすぐに歩き出す。まだ時間の余裕があると思つてゐたが、もう14時なので早めに出た方が良い。原生林歩道で何時間消費するか分からない。適当にもののけ姫の森とか七本杉を撮影しながら下る。

脚が痛い。爪も痛いがふくらはぎや腿も痛い。かなりキツい。相当ヤバい。疲労し過ぎだ。もののけ姫の森に到達した時はまだまだ余裕だと思つてゐたのだが、意外とそこからの消耗が激し過ぎて大変なことになつてゐる。帰るのが異様に面倒臭い。でも帰らないわけには行かない。まだ結構距離がある。楠川歩道を歩いて帰るのも相当大変さうなのに今から原生林歩道を歩くのは無謀なのではないかと思へて来た。しかしここまで来て原生林歩道に行かない選択はあり得ないだらう。もう屋久島には一生来ないかもしれない。このチャンスを逃したら終りだ。もしまた屋久島に来ることがあつてもわざわざ原生林歩道を見るためだけにこんなところまで入つては来ないだらう。今日無理して見ておけば全てが解決する。どうせ明日は種子島に帰るだけだ。ここで無理しても別に大したことは無いだらう。

切り株の中 もののけ姫の森9 もののけ姫の森10 木
七本杉6 七本杉7 七本杉8 白谷山荘

白谷山荘で水を補給し、休憩せずに下る。白谷山荘の水場で汲んだ水に黒い粉が混じつてゐた。大丈夫なんだらうか。誰か山でウンコしてそれが溶け流れてゐるんぢやないだらうな。不安だが渇いてゐるので飲むしか無い。ウンコを想像してしまつた後だけに気持ち悪い。原生林歩道は地図で見るだけでも相当長い。帰るのが遅くなりさうだから早めに出た方が良い。くぐり杉を抜けて分岐点から原生林へ。他の登山客はみんな楠川へ行く。原生林歩道も道が分かりにくい場所が結構ある。ピンクのリボンを探しながら歩かないと意外と危ない。道が悪いので足腰に相当負担が掛かる。水筒とカッパを入れるためだけにリュックを持つて来てゐるのだが、縄文杉の時と同じやうに肩が凝る。既に激痛のレベル。これはキツい。半泣き状態。まだまだ先は長さうだ。だんだん日が傾いて来る。暗くなる前には帰れるに違ひ無いが、急いだ方が良い。

原生林歩道はただ無駄に森の中を歩くだけの道。無理してこんなところを歩く必要性を感じない。たまに名前の付いた杉があるが、もう屋久杉自体見慣れてしまつて何の感動も無い。一応写真に収めるが、もう早く帰りたくて仕方が無い。山で育つた俺には山は何の感動も与へてくれない。最初のうちは珍しくて面白かつたが、慣れて来ると果てしなくどうでも良く思へて来る。こんな森に感動して何度でも来たいと思ふ人が多いらしい。実際に何度も何度もアホみたいに訪れる人も多いらしい。1回じつくり見ればもう良いよ。俺は何度も来たいとは思はん。どうでも良い。とにかく早く帰りたい。さう思へてしまふほどに疲れ果てて心にも余裕が無い。キツい。太鼓岩に行かなければ良かつた。想像以上に疲労した。エネルギーも猛烈に不足してゐる。縄文杉は結構本気出して色々準備したが、雲水峡はナメてゐた。だから食料も持つて来てゐない。飴だけでエネルギー補給なんかできるわけが無い。異様に腹が減つた。もはや早歩きもできない。足も痛い。黒糖飴を舐めまくるがあまり回復しない。こんなに疲れるとは思つてゐなかつた。無事に帰れるんだらうか。

二代くぐり杉1 二代くぐり杉2 二代くぐり杉3 二代くぐり杉4
原生林歩道1 鹿4 原生林歩道2 原生林歩道3
原生林歩道4 原生林歩道5 奉行杉1 奉行杉2
奉行杉3 三本槍杉1 三本槍杉2 三本槍杉3
三本槍杉4 びびんこ杉1 びびんこ杉2 原生林歩道6

思ふやうに脚が動かない。速く歩きたいのに疲労で速度が出ない。道も悪いし。それでも進むしか無いので休まず歩く。しばらく行つたら3人の家族連れがゐた。母親と娘と息子だらうか。陽気に3人で歌を歌ひながら歩いてゐる。道が狭いし向うも特に遅いわけでもないので自然と一緒に歩くやうな形になる。かなり長い間一緒に歩いてゐた。三本足杉とか不気味なヒメシャラとか、多少珍しいものもあつたが、疲れて死にさうだつたのでどうでも良かつた。三本足杉のところで少し座つて休憩。水筒をリュックから出して水を飲んだ。

三本足杉1 三本足杉2 三本足杉3
三本足杉4 三本足杉5 不気味なヒメシャラ

かなり長く歩いて、途中で3人が休憩する気配を見せた。3人を追ひ越して歩き始めた瞬間に何か巨大な杉があるのに気付いた。明らかにこれだけデカい。しかも何だか見たことがある。これは!二代大杉だ。去年はさつき吊橋の方から来たが、今日は逆から来た。逆からでも分かる。前に回りこんだら二代大杉と書かれた立て札があつた。つひにここまで来た。長かつた。アホみたいに長かつた。ここからほんの少し下りるだけでさつき吊橋だ。もうすぐ帰れる。

二代大杉1 二代大杉2 二代大杉3 二代大杉4

橋を渡らず下山する。川沿ひの道を歩いていく。ここら辺は激しく整備された道なので歩きやすい。少し行くと、弥生杉コースとの分岐点がある。当然弥生杉コースへ。去年も歩いたが今年も歩く。思つたより長い。疲労が激しいから綺麗に整備された道でも歩くのがつらくなつて来てゐる。弥生杉の他に気根杉といふのもある。

さつき吊橋3 白谷雲水峡案内図 弥生杉コース入り口 弥生杉コース1
弥生杉コース2 弥生杉コース3 弥生杉1 弥生杉2
弥生杉3 弥生杉4 弥生杉5 弥生杉6
気根杉 弥生杉コース4 弥生杉コース5 出口

弥生杉を見て白谷広場へ。やつと出た。すげえ疲れた。気紛れに太鼓岩まで行つたのは失敗だつたかもしれんな。もののけ姫の森を往復するだけでも十分だつたかもしれない。帰る時に路上駐車してあるオフロードバイクを見た。昨日同じ民宿に泊まつてゐた人のやつと同じバイクに見える。今日は別の宿に泊まつたんだらうか。別人のバイクかもしれんけど。車とかバイクに興味が無さ過ぎるから全部同じに見える。

山を猛烈に下つて行く。帰りは崖側ではなく山側を走るので精神的にも楽だ。工事中の場所は道が狭いし砂利道で危ないから、ずいぶん手前から後続の車を先に行かせる。山を下りて宮之浦へ。もう帰るだけだ。驚くべきことに、屋久島に来る前に立てた予定をほぼ完全にこなした。初日のヤクスギランド150分コースと屋久杉自然館は無理だつたが、それ以外は全部できた。もう悔いは無い。これだけやれば十分だらう。貧弱な俺にしてはよくやつた。

小瀬田にある「ふれあいパーク屋久島」といふところに寄つてみた。公園みたいになつてゐるだけで特に何も無ささうだ。ここの広場に円形のステージみたいなのがあるが、どうやらそれはウィルソン株と縄文杉の直径を再現したベンチらしい。周囲に色々と屋久島の解説が書かれてゐるので適当に読んだりした。階段を下りると海に通じてゐる。海へ行つてみた。もう脚が疲労でまともに動かん。海辺の石のところを歩くのがキツ過ぎる。特に何も無いので帰ることにした。

ふれあいパーク屋久島1 ふれあいパーク屋久島2 ふれあいパーク屋久島3 ふれあいパーク屋久島4
ふれあいパーク屋久島5 ふれあいパーク屋久島6 ふれあいパーク屋久島7 ふれあいパーク屋久島8

民宿に戻つたらオーナーがゐた。仕事で尾之間まで行つてゐたとか。歯医者だけでなく老人ホームの仕事もあるんだな。いつまでここにゐるんだらうか。俺は明日早く出る。取り敢へずシャワーで汗を流して着替へる。そして脚や肩にエアサロンパスを噴き付ける。さて、飯でも食ひに行くか。今日も温泉に行きたい。でも飯は違ふところで食ひたい。今日こそいその香りで寿司を食ふか?いや、去年行つた宮之浦の海舟といふ和食屋へ行かう。あそこの飯はかなり美味かつた。とは言つても美味かつたことしか覚えてゐない。自分が何を食つたのか思ひ出せん。刺身定食か天ぷら定食のどちらかだとは思ふんだが。それよりも、叔父が食つてゐた飛魚唐揚定食をよく覚えてゐる。やたら美味さうだつた。今日は是非それを食つてみたい。予約してゐないのが猛烈に不安だが行つてみることにした。まだ少し飯には早い時間だが、温泉に長時間入りたいから早めに行くのだ。

白谷雲水峡方面へ少し入つて行く。Aコープの奥にある。駐車場には車が1台も無い。窓から店を覗いたらガラガラだ。電気は点いてゐる。店の前にレンタカーが1台停まつてゐて、オッサンが店から出て来て去つて行つた。飯を食ひ終つたといふよりは、断られたやうな感じに見えた。やはり予約でいつぱいなのか?不安になりながら取り敢へず店に入つた。誰もゐない。突然電話が鳴り、厨房から人が出て来た。俺に気付いたが電話に出るしか無いので電話で何か話してゐた。店の人は1人しかゐないのか。どうみても料理を作つてゐる人に見える。1人でやつてゐるのか?電話が終つたので、今から食へるか聞いてみた。一寸考へてから1人ですかと聞かれた。はいと答へたらカウンター席で良いかと聞く。食へるのならどこでも良い。どうやら予約無しでもOKらしい。飛魚唐揚定食を頼んで待つ。

カウンター席の横に新聞が置いてあつたので読んでみた。この地方の新聞だつたので屋久島の記事が出てゐた。資金不足で5月から登山道の便所の糞尿処理ができてゐないらしい。近くに埋めて処分して環境への影響が心配されるとか。麓に近いところは良いが、遠いところは人力でウンコを運び出すらしい。1回で800リットルとか運ぶらしい。恐ろしい金が掛かるやうだ。その費用は寄付金等で賄はれる。色んな場所の便所に募金箱みたいなのが置いてあるが、あれだらうと思ふ。しかしその金では賄ひ切れてゐないらしい。その僅かな金と、有志からの莫大な寄付で何とかギリギリできてゐたらしいのだが、つひに足りなくなつて運び出せなくなつたとか。便所利用の際の募金はしなくても逃れられるから、金を出さない人間が多いだらうと思ふ。

女3人の客が来た。予約してゐると言つて奥へ案内されてゐた。次に来た女3人の客は予約せずに来たらしく、断られてゐた。カウンター席があと4つ空いてゐるのに。次に男2人の客が来たが、これも予約してゐなくて断られてゐた。何故だ。カウンター席があと4つ空いてゐるのに。何故俺だけOKなんだ?1人ぐらゐは良いかと思つて無理して入れてくれたのか?相当運が良かつたのかもしれない。後から店の関係者みたいな家族連れが来て入り口近くの座敷に入つて行つた。時々厨房の中に入つて行つたりする。

飛魚唐揚定食飛魚唐揚定食が出てきた。早速食つてみた。これは美味い。飛魚は骨の多い魚だが、骨を丁寧に取つてあるみたいだ。ぶつ切りにした感じのを揚げてある。もみじおろしを溶かしたポン酢みたいなので食ふ。素晴らしく美味い。感動的に美味い。他のおかずもいちいち美味い。刺身も味噌汁も美味い。運動した後で腹が減つてゐるせゐもあるだらうが、猛烈に美味い。もう1食注文したい気分だ。でも客も増えて来たし、迷惑だらうから帰ることにした。

店を出たら、座敷にゐた人が追つて来た。何かなと思つたら色々話し掛けて来た。単車で来たの?とか、他の店は予約でいつぱいだつたの?とか、どこに泊まつてるの?とか。小瀬田の民宿に泊まつてゐると言つたら何ていふ民宿か聞かれたので愛子岳と答へたら知つてゐる様子だつた。どこから来たのかと聞かれたので岐阜からだけど今は種子島の祖母の家にお世話になつてゐると答へた。屋久島はどこを見に行つたのかといふ話から、しばらく縄文杉とかの話をした。観光客と話すのが好きなんだらうか。もしまた屋久島に来ることがあれば、またこの店で食はうと思ふ。かなり美味い。今度は予約して行くよ。

温泉はまた空港の前のまんてんに行く。海舟とは民宿を挟んで逆方向だ。民宿には戻らずそのまま通り過ぎて直接温泉へ。1500円払つて風呂に入る。今日は客が多い。まづは体を洗つて、それから温泉を堪能する。サウナで12分計が1周するまで我慢できるか挑戦してみたが8分でダウン。弱いな。疲労が溜まつてゐるから堪へられん。色んな風呂に出たり入つたりを何度も何度も繰り返す。甕風呂の近くの床で滑つてコケさうになつた。その時に足の親指を強打した。凄まじい激痛。登山でやられて内出血してゐる。普段は痛くないが、押すと痛む。縄文杉を見に行つた日よりも酷くなつてゐる。今日の雲水峡でさらに悪化したやうだ。一昨日来た時は檜風呂以外は温泉ではないかもしれないと思つてゐたが、今日は内風呂も微妙にヌルヌルして温泉つぽい感じがした。

サウナに入つてゐたら外人が入つて来て英語で何か呟いてゐた。何て言つたか聞き取れなかつたが、話し掛けて来ると鬱陶しいので、もう限界といふ振りをして出た。内風呂で泳ぎ、露天風呂で泡に打たれる。甕風呂に長時間漬かり、檜風呂で体を揉み解す。朦朧として来たら一旦出て水を飲む。露天風呂の外の椅子に座つて休憩し、また温泉に入る。足の親指の爪がかなりヤバさうな色になつてゐる。最初は薄つすら色が濃くなつてゐて押すと霜焼けみたいな少し痛痒い感じだつたのだが、今では見ただけでヤバい感じの色をしてゐるし、押すと結構痛む。これも温泉で治れば良いんだが。もしかしたら爪が死ぬのかもしれない。温泉には2時間近く入つてゐたと思ふ。そろそろ帰るか。

民宿に戻つたらオーナーが真剣に本を読んでゐたので声を掛けずに自分の部屋へ。もう後は明日の朝起きて土産を買ひに行つてフェリー太陽で種子島に戻るだけだ。さらば屋久島。もう思ひ残すことはほとんど無い。午後まで爆睡して船に乗れないとか、船には乗れるが土産を買ふ時間が無いとかいふ状況になると困るので、携帯のアラームを何重にもセットし、目覚まし時計もセットしておく。さらに親に電話で起こしてくれと頼んでおいた。これでたぶん大丈夫だらうと思ふ。長いやうな短いやうな、内容の濃い屋久島旅行だつたな。猿に襲はれるとか、登山道を外れて遭難しかけるとか、足の爪をやられるとか、色んなことがあつた。あとは土産を買つて帰るだけ。

話題:種子島&屋久島 2008年夏

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