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犬土偶日記

海の近くに住みたい

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2007年07月08日

犬土偶旅行記 6日目 海岸清掃と豪雨犬

公開日時: 不明

今日は朝6時から地元の人みんなで集まつて海岸の掃除をする日らしい。可児の「花いっぱい運動」と同じやうなやつだな。可児では1世帯から最低1人出て行かねばならん。参加しないと罰金があつたはず。ゴミを拾つたりして清掃活動をして花の種を植ゑてジュースを貰つて帰るんだつたか。俺は子供の頃に参加して以降は全く参加してゐない。丁度俺が種子島に来るタイミングでかういふ清掃があるんだな。それも記念になるから良いかなとは思ふんだが、朝早過ぎなんだよ。6時からとか、普通の人間にはほぼ不可能だらうに。

体調が悪い。こちらに来てからずつと、何か脳がモワモワする。飛行機で離陸した時に気圧の急激な変化でをかしくなるアレがいつまでも続いてゐるやうな感じ。常時その状態なのではなく、突然眼球が奥に引つ込むやうな、焦点が遠くに行くやうな感じになり、耳も遠くなる。唾を飲んでも鼻をつまんで息を吐いて耳抜きしても何も変はらない。脳がをかしいのかもしれない。飛行機で急上昇した時に脳の毛細血管内で血液中の酸素や二酸化炭素が気化して毛細血管の血流が止まつたりしてゐるのかもしれない。時々モワモワして気分が悪くなるのが異様に腹立たしい。それと右肘が何故か痛い。肘の関節を曲げると関節の内側が痛む。どこかにぶつけたんだらうか。全然記憶に無いんだが。

こちらに来てからずつと天気が悪い。今朝の清掃も雨天で中止になるものだと思つてゐた。といふのは嘘。絶対にやると思つてゐた。宇宙は必ず俺に都合の悪い方へ動く仕組みになつてゐる。絶対に清掃の時間だけ晴れるのだ。それが終つたらまた雨になる。さうなるに決まつてゐる。実際さうだつた。しかもここ数日の暴風で、海岸には異常な量のゴミが漂着してゐた。流木とかペットボトルとか恐ろしい量だ。こんなの拾へるわけないだらうが。最初は全然人もゐなかつた。密かに中止になつてゐたのではないかと思ふほどに。でも遥か遠くに1人2人ポツポツと人がゐる。どこかに集まつて「清掃頑張りませう!」とか挨拶して始めるんぢやないんだな。勝手に海に下りて勝手にゴミを集める。適当に集めて火を放つ。濡れてるからなかなか火がつかない。

しばらくやつてゐたら、いつの間にか人が集まつてゐた。20人ゐるかどうかといふ程度の人数だが、こんなに人がゐたのかと驚いた。ゴミの山に灯油をかけて火をつける。燃える物は全て燃やす。2時間ほどやつて終了。ペットボトルがすげえたくさんあつた。どこかの観光地か海水浴場で馬鹿が海に捨てたのが流れ着いたんだらう。死ね。途中でヘリが海岸線に沿つて低空飛行をしてゐた。何のヘリだらうかと思つてずつと凝視してゐた。デジカメで撮影しようかと思つたが、ボロいヘリだつたし、特に珍しい物でもないのでやめた。家に帰つてから叔父があのヘリは写真を撮つてゐたのではないかといふやうなことを言つてゐた。地元の広報誌に載せる写真を。ああ、さうか。全く思ひ付かなかつた。俺は全力で凝視してたから正面から写されたかもしれんな。俺は写真を撮るのは好きだが撮られるのは死ぬほど嫌いだ。今さら後悔しても遅い。来月の広報誌に写真が載つたら記念にこの日記にも晒すよ。死ね。

海岸1 海岸2 海岸3
焚き火1 海岸4 焚き火2

家に帰つて飯を食つてから風呂に入り、一寸昼寝。昼寝といふか、朝寝といふか。一寸海岸で掃除しただけだが、貧弱な俺にはかなりキツい。昨日爆睡して今日は起きたばかりなのにもう眠い。少し寝て昼前にまた起きた。

雨が降りさうで降らない。出掛けようかと思つた。焼酎と虫刺されの薬が欲しい。でも家を出た瞬間に豪雨にやられさうな気がした。天気予報でも今日は相当降ると言つてゐた。降るなら早朝の掃除の時に降れよ。まあ無理に外出しない方が良いだらうと思つてB'zのDVDを見てヒキコモリ全開。そしたら突然の豪雨。外出しなくて良かつた。洗濯物を猛烈な勢ひで取り込む。ここ数日こんなことを何度も繰り返してゐる。最初から諦めて家の中に干せば良いとも思ふのだが、少しでも外に干さないと追ひつかない。

急激に雨が降つたり止んだりを繰り返し、絶望的に晴れる気配が無い。今日はどこかへ出掛けようと思つてゐたのだが、今日も引き篭もらざるを得ない状況。仕方が無いのでギターの練習をすることにした。1時間半ぐらゐギターを弾いてゐたら、何か外が晴れたやうな気配を感じた。日光が射し込んでゐるやうに感じた。実際には雲から太陽は出てゐなかつたが、種子島に来てから最も晴れに近い状況。これは出掛けるしかない。といふわけで、エンジンの掛かりにくい原付を必死に動かして外出。

エンジンを掛けるのに一苦労。掛かつてもすぐに止まる。家を出てすぐに止まり、エンジンが切れたまま坂を下りた。坂の下でまたキックしまくつてエンジンを掛け、そこからは順調だつた。島の西側を海岸沿ひに南へ向かふ。旧空港方面だ。10kmほど行くと野間といふところに出る。中種子の市街地。取り敢へずそこへ行くことにした。信号が全く無い。ずつと国道58号を真つ直ぐ行くだけ。浜津脇といふところを越えると内陸部に入つて行く。ずつと真つ直ぐ行つて旧空港付近に辿り着いた。ここで初めて信号機にぶつかる。滅多に無い信号機でも俺は必ず赤信号。絶対に引つ掛かる。可児でも俺が交差点に辿り着いた時は必ず赤だ。まさかこんなところに来てまで赤信号に引つ掛かるとは。まあ仕方が無い。さういふ星の下に生まれて来たんだらう。次の信号も当然赤。死ね。

信号の近くに結構大きいドラッグストアがあつたので立ち寄つた。虫刺されの薬が欲しかつた。ここでムヒを買つた。そこまでは良かつた。やはり狙はれてゐる。原付のエンジンが掛からなくなつてゐた。何十回キックしても掛からない。近くにゐた人がずつと見てた。助けてやらうか?とでも言ひたげだが、俺が一切助けを請はない雰囲気を放出してゐたのでしばらくして去つて行つた。しかしこれは困つた。もしエンジンが掛からなかつたら原付を押して家まで10kmも歩かねばならん。かういふピンチの時のために携帯電話を買つたのだが、間抜けなことに家に置いて来た。携帯電話を携帯する習慣が全く無い。10分ほどキックし続けて、どうにもエンジンが掛かる気配すら感じられないので、諦めて原付を放置して歩いて近所を散策。Aコープといふスーパーがある。中種子の生命線とも言へる店だ。これが潰れたらかなり大勢の人が生活に困るだらう。この店に入り、奥の酒屋を物色。缶のカクテル2本と、焼酎を1瓶買つた。去年来た時に土産として空港で買つたのと同じ焼酎が半額で売られてゐた。空港は高過ぎだな。エンジンがどうしても掛からなかつた時はどうしようかと考へながら原付のところへ戻る。近くのガソリンスタンドまで押して行つて修理してもらふのが最善だらうか。

憂鬱になりながら原付の場所に戻り、またキック。過労死するぞ。今度は2分ほどで掛かつた。もう止めない。家までノンストップだ。一度止まつたらもう二度と掛からない気がする。だが、そんなことより遥かに厳しい困難が待ち受けてゐようとは、この時は予想だにしなかつた。いや、家を出る前には十分予想できてゐたんだけどな。エンジンに気を取られてそれ以外のことにまで気が回らなかつた。まあ気にしてゐてもどうにもならんのだが。野間から家の方に向かつて走り始めてすぐ、水滴がポツポツと突き刺さるやうに落ちてくる。雨!これは拙い。雨具を持つて来てゐない。10kmもあるから豪雨になつたら死ぬぞ。そのまま止んでくれることを祈りつつ、必死に家に向かつて走り続ける。リミッターのせゐで50km/hしか出ないのがイライラする。家のある方向を見ると、真つ黒な雲が低空に立ち込めてゐて、さらに海の方から猛烈に大量の雲が迫つてゐる感じだ。北の方では既に豪雨になつてゐる気配。これは拙い。しかし引き返しても仕方が無い。豪雨に突つ込むしかないのか。

家に近づけば近づくほど雨が強くなる。雨粒がデカい。デカいだけでなく鋭い。可児でも豪雨の中を原付で走つたことは幾度となくあるが、これは質が違ふ。BB弾で撃たれるより遥かに痛い。止まつてゐても痛いのに、原付で走りながらだと速度が上乗せされるから恐ろしい激痛だ。雨がこんなに痛いとは。しかもヘルメットが頭頂部のみの形なので顔面にも雨が容赦無く打ちつける。死ぬ。真つ直ぐ前を見てゐると激痛で耐へられない。俯き加減で走る。視界は雨のみでもほぼゼロの状態だが、猛烈に前かがみで上目遣ひなので何も見えない。眼鏡をかけてゐるのに時々眼球に雨粒が直撃して絶叫する。何で俺がこんな目に遭はねばならんのだ。既に服は海に落ちたやうに芯まで濡れてゐる。浜津脇の辺りまで出て海岸沿ひの道を走る。海岸沿ひの道は海からの暴風で恐ろしく危険。刺さるやうな豪雨で視界もほとんど無い状態で激痛に耐へながら暴風にも注意を払ふ。幸ひにも田舎で交通量が少ないので交通事故の危険は少ない。

全くと言つて良いほど景色が見えない。数m先の道路が何とか見えるだけ。どこを走つてゐるのかさへ分かりにくい。小学校の前を通り過ぎ、家の近くまで来たことは分かる。だが、どこで曲がれば良いのかは慎重に見ないと分からない。あり得ないほどの豪雨だ。こんなに何も見えないほどの雨なんて可児では無いぞ。雨ぢやなくて滝といふのが相応しい。そろそろ祖母の家の近くだらうといふところに来て、巨大な目印を探す。坂を下りたところにあるアンパンマンの巨大な看板。それが視界に入つたら到着だ。アンパンマンの看板が何の看板なのかは分からない。農協か何かだらうか。看板があることを認識できたのはずいぶん近くに来てからだつた。それでもアンパンマンの絵は認識できない。何だこれ。何とか死なずに家に辿り着いた。家には入れて貰へず、風呂に直行。風呂は母屋と同じ建物ではないのだ。風呂だけの小屋がある。そこに外から入る。

酷い目に遭つた。晴れたやうに見せかけて俺を誘ひ出しやがつたな。まんまと吸ひ寄せられた俺の完全敗北か。どうせ降るなら早朝の海岸の掃除の時に降れボケ。芋焼酎を原液のまま舐め回しながら飯を食ふ。脳がモワモワ。酒で麻痺して蚊に刺されたことにも気付かない。早速ムヒを塗りまくり。何かつくづく運が悪いなと思ふ。絶対狙はれてる。狙はれてないと思へる要素がダニの糞ほども無い。原付のエンジンの調子が悪くなければギリギリ雨にやられずに帰れたかもしれない。まあどうでも良いよ。ここまで徹底的に俺を苦しめねばならんほどに宇宙が俺を恐れてゐるんだらう。死ね。種子島に来てまでいつも通りの狙はれ方で苦しめられてゐる俺の様子を日記で確認して素晴らしい笑顔になつてゐるお前らの苦痛に満ちた死を心の底から願ふ。

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公開日時不明
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URLhttps://orca.xii.jp/br/diary/diary.cgi?id=dogoo;date=20070708
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